古代や縄文からの文明再興するなら「漆」は利用できるのでは?と思う方も多々居るかもしれません。確かに漆は日本の伝統工芸品かつ縄文時代にも利用が見られます。ただ、個人的感想としては超レア素材。こんにゃく芋やオリーブなど一部の地域でしか入手出来なさそうな素材も紹介しましたが、漆に関しては○○行けば手に入るってレベルじゃないですね。
漆(ウルシ)
漆は端的に言うとウルシの木を傷つけた樹液が素材になります。まず、この「ウルシの木」はほぼ自生していません。
「プークスクス。ウルシなんて山に行けば赤く紅葉していていくらでも見つかるやん。ウルシかぶれに気を付けようってよく聞くし」
ウルシは基本紅葉しません(ウルシは黄葉)。紅葉するのはウルシ科のヤマウルシ・ハゼノキ・ツタウルシです。この中で漆として使えるのは「ウルシ」だけです。ヤマウルシでも使えなくは無いんですが、十分量獲ることが出来ません。
他のウルシ科の木に関しては自生もしているのですが、ウルシの木は繁殖力が低く他の木に負けてしまうため、繁殖には下草刈りなど人間の手入れが必要で、ほぼ野生化していません。また、漆を採取するのに10年以上を要する上に、1本の木から獲れる漆の量はコップ一杯分、さらに主流の『殺し搔き』をすると採取後枯れるため伐採して株から生える苗をまた育てていきます。
・・・漆塗りの漆器が高級な理由が分かりますね。むしろ縄文時代はどうやって利用してたんだ、コレ。人の手が要るなら石化後の世界ならワンチャン全滅してる可能性もありそうな。ただ、タイムスリップする可能性も否定は出来ないか・・・。
ウルシの木はヤマウルシより高いことが多い、実の大きさがハゼノキ>ウルシ>ヤマウルシでウルシの木の見分けがつく、または異世界の住人からウルシの木の情報を貰えた場合、木から漆を採集します。10年以上の漆から6~10月頃に採集。
①表面の樹皮を剥ぐ。
②地上から40cm置きに一度「水平」に傷をつける。するとそこに樹液が集まりやすくなるので3~5日後に、その傷の1cm上に傷をつけると、樹液が出るのでそれを掬って集める。(角度をつけると垂れ流してしまう。1滴でも貴重なため無駄にしないための処置)
③それから3~5日置きに傷をつけて採取を繰り返す。雨の日は避けること。
④漆は空気に触れていると固化するので、土器の小さなツボに木の蓋をするなどして回収した漆を保存する。
⑤片面だけ2か月掻く方法を「生き搔き」、両面を半年掻くのを「殺し搔き」。現在では多く採集出来る「殺し搔き」が主流。殺し搔きをした漆は冬を越せないので、11月頃木を一周傷をつけて漆を止める「止め搔き」をして伐採する。
⑥伐採した株の根元から春頃芽が出るので、それを再び育てる。
採集したばかりの漆は「荒味漆」と呼ばれ、このままでは漆として使用できないため、一度布など(日本伝統だと和紙)で濾し、ごみを除去します。
この状態は『生漆』と呼ばれ下地塗りなどに利用されます。
※この生漆+小麦粉+水(生漆:小麦粉=1:1)で混ぜると強力な接着剤になります。生漆自体に高温多湿の中で2~3時間で固まる性質があります。
この生漆をさらに「ナヤシ・クロメ」という水分蒸発させながら撹拌していく作業を行います。一応、古代でも出来そうな天日クロメという方法を軽く紹介しておきます。
①直射日光の強い、雨の降らない天日の下で行う。
②桶のようなこぼれない容器に入れて、全体が直射日光に当たるように斜めの角度にし、下に溜まっている生漆を「木のトンボ」のような物で上に押し上げ⇒下に流れるを繰り返す。
③数時間もやってると、色が変わり、上に押し上げた漆が下に流れる時間が早くなっていきます。※水を完全に蒸発させても、高温にし過ぎても駄目。やりすぎ注意。
このナヤシ・クロメを行った漆を『精製漆』(透漆)と言います。これに特定の顔料(辰砂・ベンガラ・藍玉など)を混ぜると色つきの漆になります。
いや、正直さ、「ウルシの木の判別」「殺し搔き」「天日クロメ」って素人じゃなくて職人技の域だと思います。ウルシの木さえあれば道具自体は木製の道具かつ大掛かりな道具は無いので古代文明でも準備することも可能な範囲です。とはいえ、全面的に利用するのは難しいかもですね。これでも大分おおざっぱに纏めたり割愛してますが、前にも言った通り『知識がある』ってことが大事だと思います。興味あったら漆関連はこんな簡単なモノじゃなくて奥深い世界だと思うので調べてみるといいかもしれません。
正直スルーしたいレベルでしたが、このブログの原点のドクターストーンでは強力磁石作る時の「絶縁体」として利用してましたね。まぁ、銅線に絶縁体使うまでこのブログで進むか分かりませんが、覚えておくといいと思います。
「色」を軽視するわけじゃないですが、漆塗りよりも「油」とかの「インク」の方が材料の入手度からして気軽に使えそうなんで、芸術関連進めるなら寧ろそっち優先ですね。
ハゼノキ
ウルシと同じウルシ科のハゼノキも紹介しておきます。先述の通り、こちらは西日本の山野や明るい場所に自生している、羽状複葉(とんぼの羽のような葉の付き方)の灰褐色の幹の高さ7~10mの木になります。
写真のように秋に赤く紅葉するのと、葡萄みたいな実を付けるのが特徴です。この実の皮から和ろうそくの元になる蝋(ハゼ蝋)を抽出出来ます。なお、蝋に関しては他のウルシ科の木も、ウルシ、ヤマウルシ、ツタウルシなどでも獲れることは獲れます。ただ、実の大きさがハゼノキ>ウルシ>ヤマウルシなので、皮を十分量集めるという点でもハゼノキが適しています。見分けつかなくても利用方法は同じなので問題ありません。
・・・適してるんですけど、この実の回収が一つのネックなんですよね。まず、第一にウルシかぶれが酷い場合はハゼノキ含めウルシ科の木に近づくだけでかぶれます。加えて高さ7~10mまで成長するので、実が物凄い高い位置につくんですが、栗みたいに自然落下はあまりしません。ハゼノキは植物園とかでも実物を見たことありますが、見上げるレベルでしたね。
一応、長い竹の先に黒曜石・石器(鉄があるなら当然鉄)を組み込んで刺股みたいにして茎の部分を切って落とす手(筋力+労力が半端ない)、または自然落下した実だけを集める、高い所にある実は諦めて低い実だけ集めるなどが考えられます。
ハゼの実から蝋を採集する方法は、まずもみ台って呼ばれる昔の洗濯板のように溝が掘りこんである道具で枝と実を分けます。(無ければ手でも可)
実を臼か何かに入れて木の棒などで搗き種と皮を分けます。それをふるいにかけて皮だけを取り出します。(無ければ手かな・・・)
あとは菜種油を絞る手順と同様に皮を袋(竹orカラムシなど)に入れて蒸し高温にしてから(冷めると蝋は出なくなるので注意)、両方を万力のように挟みこんで蝋を絞りだします。『蝋締め』っていう『油締め』と同じく楔を使った絞り取る道具が使われていたみたいです。
今はベンジンっていう原油由来の液体から抽出する方法、重曹などを利用する方法もありますが、このブログの現況では両方とも難しいでしょう。重曹創れてもこれ以外に使いたいだろうし。一応500gから30gの蝋らしいですが、薬品で効率良く抽出してこれなので、絞るともっともっと少ないと思って良いと思います。
使ってない中の種なんですけど、一応「救荒植物(なんもない時に食べる)」になっていて、アクを抜いて焼いて食べたり出来ます。鳥が食べてんだから、人間が食えないってことも無いのでしょうが。
鉱業をするために和蠟燭を創ることを一つの目標にしていますが、入手のしやすさを考えると獣脂>木蝋>蜜蝋って順になりますね。多分、品質は逆向きになるんでしょうが。最初の蝋燭や鉱業用の蝋燭ならほぼ100%手に入ってかつ量産も可能な獣脂の蝋燭を目指すのが妥当なのかも知れません。
蜜蝋は蜜蜂の巣を見つける運、装備が不完全な状態で刺されるリスク。木蝋は、獲れる時期が決まっているのと採集⇒蝋の作成への手間暇、労力。文明再構築するのに獣脂の臭いがぁなんて言ってるのは甘いのかもしれません。