以前、初期農業で『土づくり』関連までを記載しましたが、作物を育てるのには栄養素の『肥料』が必要になります。
現代なら化学肥料がいくらでもありますが、古代では『金肥』と呼ばれる、町で金品と交換していた物が肥料として効果が高いです。油を搾った『油粕』。いわしを干した干鰯などの『魚粕』などがそれに該当します。
全ての有機肥料に言えるのですが、最悪そのまま土に使っても、効果は無くは無いです。ただ、虫やネズミなどが発生するなどデメリットがあるため、肥料として使う前に発酵させておくのが基本になります。
(どうせ作るなら、最大効率を目指すのは当然のため。鶏糞などでも同様)
最悪そのまま使う場合は、作物を植える2週間~1か月前に前もって土に使っておきます。尚、PHを調整する石灰とは同時使用しないこと。
肥料が無くても、土の中にある肥料要素で育つ可能性が無くもないのですが、当然ながら失敗する可能性も高く、元肥・追肥を適切に行った方が、作物がきちんと育つ可能性が高くなります。
農作物だと『追肥』する作物が多いのですが、上の肥料でも良いのですが、即効性の肥料に『液肥』があります。畑が使えない状態での『水耕栽培』などにも使えるため、サバイバルでペットボトルでカイワレ大根とか作りたい時にも利用できます。
①水:油かす(油かす以外でも可能)を10:1で瓶など(現代ならペットボトル)によく混ぜてから入れ、密封せずに少しだけ封を開けて入れる。(※密封すると容器が破損する)
②直射日光の当たらない風通しの良い場所に放置。夏なら1カ月、冬なら3カ月ほど放置する。非常に匂いがきついので保管場所など注意。発酵中に定期的に振るなどして、酸素を送るとより効果的。
③上澄み液を5~10倍に希釈して使用する。下に残った油粕なども肥料として利用可。
ぼかし肥
有機肥料をそのまま入れるとデメリットがあるため、予め発酵させた肥料を『ぼかし肥』と言います。定義が広く、いろんな作り方がありますが、土に混ぜるあくまで一例を紹介。
①リン酸の多い有機肥料(米ぬか・鶏糞・骨粉)と窒素分の多い有機肥料(油かす、魚かす)を1:1で準備する。
堆肥と同じように山の土(現代だと、ヨーグルトや納豆や発酵菌を入れる手もありますが、このブログでは土の中の微生物で発酵させるため。落ち葉の下など、白い土着菌と呼ばれる物があれば尚良)を有機物と同じ量用意する。
リン酸:窒素分:土=1:1:2
※窒素・リン酸・カリウムの『カリウム』が足りない可能性が高いが、その場合は『草木灰』にカリウム分が含まれているので、混ぜる・土に付与するなどして調整。発酵促進剤として、米糠・腐葉土などを混ぜる場合も有。
②3つを良く混ぜる、発酵促進剤に当たるモノを使う場合はそれもここで混ぜる。
③水をかける。ここの水分量と風通しは注意。堆肥と同じく50%前後の軽く握って固まる程度。一部では無く全体に染み渡るように混ぜる。雨が入ると失敗するため、雨除けの屋根や防水の為の箱などがあるのが望ましい。
④直射日光の当たらない日陰か半日蔭で干す。4日~1週間に1度切り返す。3週間~1か月後、さらさらの状態になれば完成。
※堆肥と同じように層を重ねて発酵させる方法もあります。この方法は好機性発酵ですが、バケツなどで空気を封じ、嫌気性醗酵で作る場合も有。
下肥について(やや閲覧注意)
日本で古来より使われてきた下肥ですが、肥料としての効果が無いわけではない(だからこそ、農民に重宝された)のですが、肥料としては『下の下』と言っても良いと思います。気持ちの問題では無く、凄い効果がある無料で手に入る肥料ならば、現代でも使われてるはずですが、牛糞・鶏糞は現代でも使われていても、下肥は0なのがそれを物語っています。
以前もどこかで書いた気はするのですが、糞は食べるものによって安定しないのに加えて、人に害がある要素を作物に移す可能性があります。発酵させずに使うと、ガスが発生するなどデメリットが生じるのは他の肥料と同様で、発酵させてもそこまで有用な肥料ではありません。逆に尿に関しては、ほぼ水なのですが、薄めて発酵させて使っても問題ありません。
ただ、日本の古代文明で『水源』や『公衆衛生』が、西洋の様にひどくならなかった理由の1つに、この下肥を農業に使っていた部分が大きいと思います。(豊富で綺麗な水源が多かったのも理由の1つ)
そのため、発展のために下肥禁止にすると、今度はそれの処理が難しくなり、『下水道』関連を上手く発展させないと、飲用水の確保や病原菌による流行り病などの可能性が高くなります。一応、肥料の要素分だけ獲る方法も現代ではあるらしいのですが、どちらにしろ処理以外の有効活用がなかなか難しい(一応、アンモニア・硝石などの利用も考えられますが)ので、過去へタイムスリップなどする場合は、文明の発展具合・その土地の風習次第では安易に禁止にしない方が、良い場合もあるかもしれません。