異世界転生する前に

異世界転生する前に

異世界転生する前に現代社会の栄智を勉強しておきたい

ふいご・たたら(鞴・踏鞴)

文明を発展させるためには、『製鉄』が必須で製鉄を行うためには、『ふいご』と呼ばれる風を送る道具が必要になります。

普通に炉で木炭使って燃やしても製鉄には温度は足りません。そこで、風を送って温度を上げる必要があります。キャンプで種火に息を吹きかけたり、台所で火力調節するために竃に竹で息を吹きかけるのと同じような行為ですね。

よく郷土資料館とかに置いてある鍛冶師が使っていたふいごが上記の「差しふいご」になります。

最初見た時に、なんで『真ん中に穴が付いてるの?』って疑問に思いましたが、押すときも引く時も両方空気を送れる仕組みになっています。

上の図は上蓋を外してますが、本来この上に空気が漏れないように上蓋を乗せ、その上に空気で蓋が飛ばないように石などを重しにします。

中にある板を押したり引いたりピストンさせることで空気を送ります。空気が漏れないように内板の裏側に動物の革(なんか狸の皮って聞きました、布だと空気が漏れるかも)を裏打ち。

空気を出し入れする部分は、穴を開けてその内側に板を上部だけ紐で結び付け、パカパカするように(押すときは空気を遮断、引く時は逆に空気が入る)します。上二つは内側で、下二つは外側です。

下の手前の四角いボックスは、最悪無くても出来ますが、江戸時代の完成形はこの形です。文献だと45度ですが、自作するなら四角×2の90度の方が作りやすいような気がします。

空気を出す真ん中に管(現実的には竹だが、空気さえ送れれば皮などでも可)をつけて、炉に送風します。

 

日曜大工の基本中の基本の『箱』の変形型みたいな作りになっているので、職人でなくても自分でもギリギリ手が届きそうな範囲かな?とは思います。

『道具さえあれば』

釘は最悪木材接着剤の膠とかでも代用出来るかもしれませんが、空気が漏れないように正確に木を切るのは「ノコギリ」無いと難しいかと思います。なんで、最初の製鉄にこのふいごは難しいのですが、手が届きそうな範囲ではあるので、作り方や仕組みを覚えておくのは損では無いと思います。

 

差しふいごが作れないならどうする?って話なのですが、日本で一番最古の鞴は『天羽鞴』という獣皮の鞴です。皮で作った袋を使った送風方法ですが、難しい資料な上に当然現物残ってませんので、ここはドクターストーンのものが簡単かと思います。

 

                 漫画Dr.STONEより引用

上記が作中で最初に創られていた『皮ふいご』ですが、仕組みや作りが簡単なので、まずはコレから作りたいですね。袋は動物の皮、取っ手は木、空気送る先端は竹、それを蔓で縛って、空気漏れないように縫ってる感じだと思われます。動き的には①で両方の木を中央に持って来て、②でその空気を押して送るを繰り返す形。

作中でも4人で行っていましたが、基本ふいごで風送る場合は、1人では無く4人~6人の複数で風を送っている図が残っています。たたら製鉄でもたたらから管複数延ばしていますし、風力は強ければ強い程良いし、人数多ければ多いほど良いですね。

風を送って鉄が溶ける温度まで温度を上げてるので、逆に風が無かったら鉄が溶けない温度になってしまいます。そのため、風を常に送り続けなければならないのですが、製鉄は3日3晩ですので、この点でも一人は無理ですね。

文献には「たたら踏みの仕事するなら乞食の方がマシ(要約)」とも書かれてますし、「かわり番子」って言葉、たたら製鉄から来てるみたいです。工場のライン作業とかしてれば分かると思うのですが、100回・200回なら大したこと無いことでも、8時間~10時間やってると、さすがに足や腕がパンパンになりますからね。現代ならともかく古代で製鉄は1人じゃ基本難しいと思います。

                漫画Dr.STONEより引用

ドクターストーンでは、上記の皮ふいごの次に、竹ふいご・・・のようなものを作成してましたね。

漫画で見た時、真ん中の構造どうなってんだ???って疑問に思ってましたが、アニメ見る限り上と下を紐で結んでるようですね。『竹』・『革』・『紐』があれば作成出来るので、序盤でも日本(と言うより「竹」が入手できる場所なら)なら、製作は容易ですね。

・・・ここで手より足で踏む、現代の足踏みポンプみたいなのの方が手より楽じゃねって疑問が浮かぶと思うのですが、確かにアコーディオンみたいな皮ふいごは、中世で使われていたふいごであるし、現代もあるんですけど、結局手で上下しないとならないんですよね。道具があればDIYでも創れなくも無さそうなんですが、それ作れるのなら上記の「差しふいご」の方が簡単で有力と自分は判断します。

       

     イラストでみる はるか昔の鉄を追って―「鉄の歴史」探偵団がゆく より引用

その足で踏んで送風するのが、上記の「天秤たたら」になります。たたらは、もののけ姫が有名な気がしますが、あれのさらに先の型で、真ん中に人が立って左右を交互に踏む、1人で稼働出来る道具です。鬼かな?

上の図見ると「うえぇ」ってなるかもしれませんが、考え方や構図は、一番上の「差しふいご」と変わりません。空気の出し入れを、紐で結んだ板のパカパカで調整して、踏んでる時は閉じるように、踏んでない時は外から空気を取り入れるようになっています。

バネとかで上下運動するのでなく、上の天秤で片方下げると片方上がる構造なのが面白いですね。差しふいごと同じように空気が漏れない機密な作りが求められますが、素材的には木と紐さえあれば作成可能なので、素材的には集めるの難しくありません。

 

最初の製鉄は、皮ふいご・竹ふいご、もし届けば差しふいごになるとは思うのですが、製鉄って簡単では無く失敗する可能性の方が高いくらいです。強力な送風装置があれば成功の可能性をあげられると思うので、導入を検討したいところです。

事実、今日本に残っている島根県の「菅谷たたら」では上記の天秤ふいごでは無く、巨大にした差しふいごで製鉄をしていましたし、それで製鉄が不可能では無いです。

古代中国では強力な送風装置を擁していて、強力な送風装置=製鉄の技術が進んでいました。最終的には、コークス高炉で後れをとるのですが、一歩進んだ技術なのは間違いないですし、手より足の方がまだ楽な気もするので、覚えておくと良いと思います。

 

 

耐火レンガの作り方の「耐火粘土」、この強力送風装置のふいご・たたらと、砂鉄か磁鉄鉱か鉄の素材と炭があれば、一応最低限度の製鉄の準備が整います。

きちんとした炉を作るなら「耐火モルタル・セメント」が足りませんね。モルタル・セメントは、

①材料に900度以上温度が必要

②どれくらいで固まるかの化学反応が本1冊以上の内容。素材の混ぜ方や容量、養生や火山灰の質によって違い、一様には言えない。

③セメント作るのは良いけど、鉄なしで壊せるか疑問

って懸念点から「うーん」ってなってるんですよね。ただ、セメントあるといろいろ造れますし、古代ローマ以外なら「チート知識」の一つだとは思います。

 

今回、ふいごに関してはドクターストーン頼らざるを得なかったですね。日本の製鉄で文献があるのは、基本『たたら製鉄』か『八幡製作所』でそれ以前は皆無に近いです。

ヒッタイトの製鉄法、ほぼどれにも載ってないってぼやいたことありますが、推測は出来るんでしょうけど、物が出土してないので証拠が無い。一般人的には憶測でも良いから書いて欲しいって思うんですが、『先生』が書籍だすので憶測では出さないですよね。古代文明の真偽じゃなくて、これで出来るんだろ?をやってくれたドクターストーンには感謝しかないですね。

 

これで一応、このブログでも『製鉄』が可能になったわけですが、先に小説書く人にも参考にして欲しいのですが、この木炭を使った製鉄、物凄い量の木を消費します。それに対して獲れる鉄は少ない非常に効率の悪い方法です。

足尾銅山事件や黄鉄鉱などの硫化鉱物・・・科学を進めていけば、負の面があるのも事実です。そのメリットデメリットが核兵器原発まで繋がるわけですが、製鉄したら山は切り崩され禿山を作る可能性は高いですね。文明の発展には『必須』ですが、それが幸せなのかどうなのか?は頭の片隅には入れて置く問題かもしれませんね。