異世界転生する前に

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異世界転生する前に現代社会の栄智を勉強しておきたい

耐火レンガの作り方・最初の炉について

文明再構築について、最初のサバイバル知識で生き残れたら、何が必須ですか?と聞かれたら、『炉』って答えます。古代の製鉄とかも炉にするなら、本当に必須でコレないと原始時代か弥生時代が終わりません。

『炉』を創るためには、燃焼に耐えうる『耐火レンガ』が必要(通常のレンガなら、粘土を日干しすれば作成可能だが、高温に耐えられない)なんですが、この『耐火レンガ』が結構鬼門。

知識チートとかでも詰む場所で、小説ならぼかす(鍛冶師が耐火レンガ持ってるとか、たまたま土が耐火レンガ向きだとか、耐火素材であるポーキサイト・クロム鉄鉱を入手可能とか、最悪魔法で耐火が付くとかでも良いと思う)で良いんですが、一応当ブログでは実際自分が行えるであろうという設定で記載してるので、やや推測気味になってしまうのですが、以下にここ1年近くの勉強を加味して記載します。

最初の炉

結論から先に書くと、「最初から耐火レンガを創るのは不可能に近い」です。耐火レンガの作成方法、調べれば分かるのですが、耐火レンガを作るためにはいろいろ方法はありますが、その全てが1300度近くの高温で焼成することで完成します。つまり、耐火レンガを創るのには、1300度以上の高温に耐える炉、耐火レンガで造られた炉が必要と言う、耐火レンガを創るのに耐火レンガが必要という矛盾にぶつかります。

日本で耐火レンガが作られたのは、江戸末期以降です。それまでも鉄の作成は、「たたら製鉄」と呼ばれる製法で作られていました。たたら製鉄の炉の温度は1100~1300度。この炉は耐火粘土で作られ、一回一回壊して使用してました。

つまり、耐火粘土で作った炉で耐火レンガを焼成するため、最初の炉は耐火粘土で作る炉になります。おそらく、最初に鉄を作ったヒッタイトもこの炉で作成したと思われますし、自分が敬愛しているドクターストーンでも最初の製鉄の炉は破壊して使っています。

 

その『耐火粘土』は何処で採取出来んねん?って話になると思うのですが、耐火粘土=シリカSiО2を多量に含まれてる粘土と考えて良いです。要は、珪砂や蝋石を多分に含む粘土です。文献によっては『白土』とかって記載もありましたね。

珪砂というかシリカは、ガラスの素材にもなり、この先必ず必要になる素材ですので、珪砂を探した際に近くにある粘土(珪砂を含む可能性が高い)を採取すれば、耐火粘土の可能性が高いと思われます。珪砂の探し方は、下流石英・蝋石などの破片が流れてる場合が多いので、そこを辿って水晶を探し露頭を見つけます。

余談ですが、韮山反射炉で使われた耐火煉瓦の耐火粘土は、伊豆の天城山で採取されています。今も採れるかは知りませんが、こういう場所にあると覚えておくと目安が付きやすいかもしれません。

※今回は「耐火レンガ」のため、製鉄法では無く、炉内の温度を上げる方法を記載します。

最初の炉は上記のようなものが想定されますが、断面図だと分かりにくいのですが、木炭を創る際の土で覆ったものに近いかもしれません。

理由があって1300度前後で熱したい(製鉄もそれくらいの温度が必要)ので、ただ内部で熱してるだけではそこまでの温度に達しません。

そのため、内部で木炭・石炭・コークスを燃料として燃焼させながら、強力な送風をふいごで行う必要があります。製鉄の場合は、3日3晩手動で送風させなければならず、足踏みにしろ人海戦術にしろ工夫が必要かと思われます。たたら製鉄の際も、管を複数用意して送風していたので、手動ならば風は強ければ強いほど良いです。

文献によると、耐火粘土の耐熱性をあげるために「藁」「珪砂」「一度焼成した炉」などを粘土に混ぜたと記載があります。これが耐火レンガへのヒントになります。

シャモットレンガ

最初文献を読んだ時、「一度焼成した炉を砕いて粘土に混ざる」って書かれていて「???」と混乱した記憶があります。これはシャモットと呼ばれる耐火粘土を1300度~1400度の高温で熱したモノを粉々に砕いたモノになります。

・・・ふと思うんですが、製鉄が1200度以上必要なので、製鉄に使った炉の内部の耐火粘土って、シャモットの条件を満たしてるのでは?

製鉄に耐火粘土の炉を使用⇒耐火粘土の内部がシャモットへ変化⇒炉の内部を粉々に砕いて耐火粘土に混ぜる(資料ではシャモットが全体の3割)⇒再度1300度~1400度の耐火粘土の炉で焼成

これで耐火レンガが作成できる・・・と思われます。ちなみに世界遺産韮山反射炉の耐火レンガもシャモットレンガで、シャモットレンガの焼成には登り窯(最大1300度・耐火粘土で作成)を使用して大量に焼成しています。

けい石レンガ

耐火レンガって聞いて、自分が最初に思いついたのはこの「けい石レンガ」なんですが・・・これまた結論から書くと初期状態では難しいって思ってます。

先述の通り、耐火粘土はシリカを多く含む粘土で、珪砂に関しては質を問わなければ、各地で簡単に採集出来る素材ではあるのですが、現代使われてるけい石レンガは1400度~1500度焼成しています。珪砂を混ぜた耐火粘土も耐火性は上がるのですが、それは厳密にはけい石レンガとは、また違うモノって感覚です。

正直、製鉄の温度や上記のシャモットレンガの1300度も達するの古代文明では達するの容易では無いと思ってるんですが、さらに高温になると不可能とは言わないのですが、難易度が跳ね上がりますね。

けい石レンガ自体は、耐火粘土・珪砂・石灰石があれば作成可能なので、材料自体はかなり揃いやすいんですが、この高温と石灰石の添付を見つけるのがネックだったらしく、現世界でも19世紀に発明されてるので、最初の耐火レンガとしてはハードルが高いかな?って印象です。

ろう石レンガ

日本の耐火レンガで有名なのがこのろう石レンガになります。こちらは鉄腕DASH反射炉を作成した際に使用されたレンガでもあります。自分が仮想拠点にしている神奈川県小田原だと難しいのですが、広島県岡山県など西日本で採取可能で、この辺りを拠点にするのなら、このろう石レンガを狙うと質が高い耐火レンガを作成することが可能です。

・・・いや、焼成温度何度やねん?って話なんですが、ろう石レンガもけい石レンガと同じく1400度以上の高温が必要かと思われます。文献にはこちらも登り窯で焼成したとありますので、上記のけい石レンガ含めて初期だと頑張れば作成可能かもしれないくらいの塩梅ですね。とはいえ、そういう利用も出来るって覚えておくと役に立つ場合もあるかもしれません。

パーライトセメント・パーライトモルタル

ドクターストーンのガラス容器作成の際に、「黒曜石を炙ると発泡体が出てくる」と記載があり、これを塗りたくって断熱剤にしていました。

これはパーライトと呼ばれるものであり、黒曜石を1000度の高温で炙ることで入手出来ます。

※余談ですが「黒曜石」は、伊豆の神津島が原始時代から産地です。どうやって海渡ったんや?って話なんですが、天気の良い波の無い日に目視で木の船で向かったようです。無理しなくても、箱根や熱海でも採集可能ですが・・・。

このパーライトをセメントなどと混ぜることで、耐火性のあるモルタルやセメントを創ることが出来ます。耐火レンガだけあっても炉は創れないので、必然的にこちらも創る必要があります。

・・・いや、レンガ創らず、これでセメントブロックで炉を創ればいいのでは?の考えは合っています。実際、ピザの炉とかの耐火性を必要とする炉を自作している方は、数多く居らっしゃいます。

割合一例

パーライト10、バーミキュライト10、セメント3、砂6

パーライト3、パミス3、セメント1、水2

セメントやコンクリートブロックは、焼成する必要が無いので、パーライトなど素材さえ入手可能なら、最初の耐火炉の素材の選択肢に上がります。

このブログでは『モルタル』『セメント』の発明をしていない体ですので、それもまたそのうち記載したいですね。石灰を水酸化カルシウムにするのに『炉』が欲しいなって思ってたんですけど、耐火粘土の炉で創るのがやはり妥当ですね。

 

耐火レンガ狙うなら、「シャモットレンガ」を狙うのが容易って結論なんですが、これだけ他候補もあれば、さすがに気合で頑張るよりかは確率が高くなると思います。耐火粘土の質や混ぜる容量などで違いが出ると思いますが、さすがにそこまではトライ&エラーですね。ただ、なにも知らないよりかは手の届く範囲だとは思います。

耐火レンガ調べるのに、伊豆の韮山反射炉に足を運んだんですが、耐火レンガの作り方に関しては展示が0でした。また、鉄ってヒッタイトが使い始めたみたいな文献はいくつもあるのですが、ヒッタイトの耐火炉の記載どの本でも0です。(多分、証拠が無いから憶測でしか書けないため)たたら製鉄も炉の歴史についても、炉の変貌やたたら製鉄の製法に関しては記載があるのですが、使われた耐火粘土・レンガまで書かれてる文献はかなり少ないです。

韮山反射炉の耐火レンガの作成の資料見るのに大分手こずりましたね。「シャモットレンガ」って存在を知っていれば、簡単な話なんですが、最初けい石レンガなどをメインで調べてて上手く行きそうもないなぁって思い悩んでました。現代の人なら、初めから壊れない炉を創りたくなるんですが、それを諦めるのにも時間がかかりましたね。

製鉄と同じく、炉の温度を1300度以上まで上げるのが難関なのですが、それは製鉄が出来る=古代文明でも出来るって証明されてますからね。耐火レンガは難しい課題(これだけで本書けるレベル)ですので、少しでも参考になれば幸いです。