異世界転生する前に

異世界転生する前に

異世界転生する前に現代社会の栄智を勉強しておきたい

辰砂・水銀

辰砂

水銀を採集したい場合、『自然水銀』(と、それと付随して発生する水銀蒸気)からも回収が可能ですが、自分達に馴染み深いのは『辰砂(硫化水銀)』の方かもしれないので、ここからの採集を記載。

辰砂は上記の写真のように「赤い」鉱石(厳密には赤以外もあるんですが、ここでは割愛)なのですが、鳥居とかに使われる朱色・丹とかが有名かもしれません。ちなみに、同じような赤色の『ベンガラ』は酸化鉄・赤鉄鉱です。

・孔雀石⇒緑 藍銅鉱⇒青 瑠璃(ラピスラビリ)⇒青 などなど

※『顔料』『染料』と出てくると思いますが、顔料=水に溶けない、染料=水溶性。水に溶けなかったら、衣類に染色するのは難しく、漆や油などと混ぜて絵具のように使うのが一般的かと。

 

辰砂が『何処にありますか?』に関しては、京都・奈良に近い三重や北海道なら多々水銀鉱山が大量にあります(鳥居などが発展した理由かと)

関東・東海に水銀鉱山はほとんど無いんですが、辰砂に関しては『奥多摩』で採集することも可能です。もちろん、工業用にうんたらかんたらとなると違うかもしれませんが、文明再構築に必要な程度なら、他の鉱石と一緒に水銀が出る可能性も否定できません。その辺は、採掘の状況と応相談。

紅い鉱石と言われても他にも紅い鉱石多々あるのですが、辰砂の特徴の一つとして『比重が重く』、砂鉄などと同様に浮遊選鉱・鉄穴流しが有用です。比重がそもそも違うのですが、ヒ素の鉱石である『鶏冠石』とは、『条痕』が『辰砂が赤・朱色』に対して『鶏冠石は黄色~オレンジ』で区別可能。ちなみに『赤鉄鉱』とはモース硬度が違い、辰砂の方が脆いです。

(※ 『水銀』なので、言うまでもありませんが、浮遊選鉱などの排水には厳重注意。水銀蒸気を吸入もかなりヤバイのですが、魚などを通した有機水銀が公害の水俣病の原因。排水の土地では農業が出来ない事・土砂崩れ、洪水などで流れないように留意)

 

水銀生成

辰砂を、絵具として使う場合なら、目視して紅い部分だけ削る、砕いて赤い部分だけにする。(具体的に言えば2~3cmに粉砕)古代人は目視+手作業で行ってる場合、先述の浮遊選鉱・鉄穴流しを行い、やや大規模に選鉱してる場合とに分かれます。

辰砂を400~500℃以上で熱すると、水銀蒸気+二酸化硫黄(亜硫酸ガス)になり、その水銀蒸気を冷却することで、水銀を得られます。熱した蒸気を逃がさず冷却する必要があるので、焚火というよりかは、実験の蒸留に近い形が無難かと思います。

参照  『考古調査ハンドブック⑭ 朱丹の世界』 市毛 勲

水銀生成に関しては、基本『分らない(厳密に言うと、証拠が無い)』って文献がほとんどなんですが、『考古調査ハンドブック⑭ 朱丹の世界』の水銀作成が、面白かったので紹介しておきます。(厳密には土で冷却・濾過してるんですが、ここでは分かりやすくするために割愛)

壺を二つ用意して、上の壺を反転させ、上下の壺を繋げます。上にはあらかじめ辰砂の粒をいれて置き、下の壺は地面に埋めておきます。

上の壺を燃焼させると、水銀蒸気・二酸化硫黄が発生し、空気より重い水銀蒸気は下の壺に入り、そこで冷却されて水銀蒸気⇒水銀になります。亜硫酸ガスは、おそらく隙間から外に流れる。

(上の図もそうですが、この文献自分には難しく、ちょっと食い違いがあるかもしれませんが、自分なりの解釈・簡潔にすると、おそらく上記のようなことだと思います。興味があれば、元の文献を是非読んで欲しいです)

 

このやり方で一番面白いと思ったのは、この方法で『亜硫酸ガス・水銀ガスは人体に有害』と分かってるので、炭を入れて燃やしたら一晩放置して、次の日に水銀を回収していること。

なろう系だと下に見てるんですが、自分は理屈はともかく蒸気がヤバイということは、古代人であろうと知っていたと思っているので、このやり方なら害は少ない(亜硫酸ガスが空気中に拡散するので、現代では駄目なやり方なんですが)と思われます。作物とかの影響や冷却の関係で『冬』に行われていたというのも面白いです。

 

水銀蒸気を防ぐ手段としては、やはり『ガスマスク』になると思います。空気を活性炭で中和させる、プラスチックなどになってますが、仕組み自体が自分が今会社で使ってるガスマスクも大差ありません。吸う空気を一度炭を通るようにし、他の部分から空気が入らないように注意。

水銀・鉛は、人には排出機能も備わっており、にんにくなどが有用とされる文献もありますが、あくまで『軽度』で、重度になったら、治す術は特に古代文明では難しいと思います。

 

 

水銀の用途ですが、このブログではとりあえず『温度計』が最優先ですが、触媒・電極・電池・蛍光灯・赤チン(どれも現代では代替えが進んでいますが)などに利用可能です。異世界チートだと、鉛アマルガム(鉛の方が簡単に入手可能なので鉛の方が多いですが、水銀でも可能)による、灰吹き法の金・銀入手法が有名ですかね。

辰砂で顔に紋様や、始皇帝が不死の薬として飲んだ、伊勢白粉の素材などとされていますが、現代人なら『水銀』は不味いって知識はあるはず。異世界転生したら、気を付けたいですね。