※現日本だと一般的に大麻=麻薬のイメージですが、この記事では糸として、植物としての大麻を取り扱います。
大麻(あさ)
旅行で『長野県立博物館』に行った際に、大麻・カラムシ・綿で出来た糸を触る機会がありました。正直、全部同じ糸なので最悪代用出来ると思っていましたが、『全然違う』ってのが素直な感想。
特に大麻は物凄くしっかりしており、紐とか縄とかに大麻を利用してるのは、納得しかありません。着心地で絹なのも正直、納得。
(もちろん、代用出来る部分も無くは無いと思います)
大麻なんですが、『現日本』では強い規制のため、極一部にしかありませんが、『過去の日本』、そして(文明崩壊後の)『未来の日本』には、繁殖していると考えています。大麻は非常に繁殖力の高い植物です。
見分けに関しては、上の葉の形もそうなんですが、『1m~2.5m』の高さの植物。サトウキビのように背の高い麻が群れを成してるので、野草とかならおそらく判別つくはず。(さすがに現日本で野草の大麻は無いと思います)また、大麻には独特の匂いがあるそうです。(嗅いだことないので申し訳ない)
3~4カ月で成長する1年草で、流石に冬は越せない(12℃以下で枯れる、ただし暑すぎるのも悪影響)ので、春に撒いて、夏ぐらいに収穫するのが基本。(場合によっては、年2回収穫も可)
大麻から繊維を獲る作業ですが、『本づくり・紙づくり』の繊維獲りに近いかもしれません。あれも、全部が獲れる訳ではなく、外皮の内側が繊維になる訳ですが、大麻も中は空洞の小さな木みたいになっており、その外側の繊維を使います。(実際、大麻で紙も作れる)
①十分に成長した大麻を収穫し、根と葉を切り落とし(葉は乾燥でも落ちるのである程度でも可)、一纏めにし、沸騰したお湯で煮込む(2~3分・全部は難しいので下半分、上半分の2回に分ける)。その後、天日で乾燥させる。10日~。その後、再度お湯で煮込む作業をする。
②①を水に5日程度浸けると、発酵し皮を剥げるようになるので、皮を剥ぐ。その皮から、金属製の櫛などを使い、余分なものを削ぎ落す。
この時の余分の物を、『麻垢』と言い、この部分を水で洗って紙にすることも可能。綿の代用品としても利用可。
(発酵しすぎも、発酵しなさすぎも品質に影響。発酵のため、水の温度が30~40度が望ましく、特に前回利用した酵母などが付いてれば尚良)
③②を2~3日、竹干しに吊るして陰干しすると、『精麻』になる。
懐炉灰
皮や繊維は上記の様に糸などに利用出来るのですが、皮を剥いだ残りの茎(オガラ)と呼ばれる部分の利用ですが、燃やす燃料・屋根材としても利用できるのですが、『懐炉灰』と言う利用方法があります。
灰なんですけど、オガラを『炭』にして、携帯用懐炉(鉄の容器などに灰とこの懐炉灰を入れて燃焼)として利用します。
使い捨てカイロといえば、鉄を空気の酸化+塩水の『ホッカイロ』の方が有名で、作れなくもないのですが、どうせ麻作る廃棄部分で作れるので、個人的には懐炉灰の評価は高いです。6時間ぐらいは持つみたいですし、炭を作るのが職人技ですが、ホッカイロ作るよりかは楽だと考えています。
大麻の弱点として、このブログの現況では関係ありませんが、紡績、海外の機械で糸が紡ぎにくいって弱点があり、それが綿・絹に劣った理由の1つになります。衣装用では無いのもあるでしょうが・・・。
一応ですがヤバい成分は、『葉・花』に多く含まれているのですが、昔の日本産だとほとんど無いと言われています。事実、日本史で全くそんな話ありませんし。また、大麻の種は、非常に栄養価の高い食べ物です。七味唐辛子にも入っています。繊維と両立は難しいですが、種から油を獲ることも可能です。
(切り落とした葉などは、緑肥として、肥料に混ぜる)
個人的にも大麻=麻薬のイメージが強いのですが、こうやって改めて見ると、特に古代文明では文句なしに使える植物の1つだと思います。強い繊維から糸、綿(代用)、燃料、懐炉、紙、種を食用と、上から下まで割と使いどころが多い。育つのも早く、繁殖力が強く、やたら背が高く育つので、産業用で検討されるのも頷けます。
ヤバい成分が、0でも交配させると強くなったり、特に廃棄する葉の部分に価値があるのが問題で、たばこ・アルコールが良くてなんで駄目なのとか、麻の繊維が『現代』だとそこまで需要(日本のしめ縄・神社にはありますが)が無さそうとか、いろいろ問題はあるのですが、面白い植物の1つだなとは調べてて思いました。難しいでしょうけど、1度実際に見てみたい植物でもありますね。